梯 剛之(かけはし たけし)さん、29歳。生後間もなく小児がんにより視力を失います。

よちよち歩きのころからお母さんの膝の上でピアノの鍵盤をたたいていたという梯さん。彼の音楽の才能に気づいた家族の援護の下、4歳半より本格的にピアノのレッスンに通い始めます。その一方、なみのり保育園、八王子市立中山小学校と、多くの友達・先生とともに明るく、楽しい幼少時代を過ごします。小学校卒業前に、ピアニストの道を歩むことを決意し、音楽専門の中学校に進学することを希望しますが、日本国内の音楽学校は梯さんを「視覚に障害がある」という理由で受け入れてはくれませんでした。小学校の卒業も間近にせまった12歳の冬、まだ進学先も決まらず途方にくれていたところに「ウィーン国立音楽大学の準備科は、実力さえあれば誰でも受験することができる」という話を聞きます。一縷の望みを託して梯さんは母親と共にすぐさまウィーンに飛び立ちました。そして「実力こそが全て」の音楽の都・ウィーンは梯さんを受け入れてくれました。日本から遠く離れた異国の地、言葉もままならず、全盲、そしてがんの再発。しかしどんな苦境の時にもあきらめず、ただひたすら夢に向かって努力を続けた梯さん。ヴァイスハール教授の厳しくも粘り強い指導の下、梯さんは技術的にも音楽的にも大きく成長します。そして、その実力は数々の国際的音楽コンクールで賞を取ったことから多くの人々に認められることとなりました。

その中でも1998年、(若手音楽家の登竜門)ロン・ティボー国際音楽コンクールに挑戦し、見事2位入賞という快挙を成し遂げた梯さんの姿は、テレビや新聞などで大きく報道され、多くの人々に感動を与えました。そして、文溪堂から出版された『5年生の道徳』という小学校向けの道徳副読本に掲載されました。梯さんのピアノにかける情熱、一つのことをやり遂げようとする姿勢は全国の子供たちに勇気と感動を与えています。

デビューから10周年を迎えた梯さん。現在もウィーンを拠点にピアノの腕を磨き、世界を舞台に、精力的に演奏活動を行っています。その一方で、多くの人々の温かな心と援助に支えられてきたからこそ、今があることを知る梯さんは、小児ガン研究や障害者のためのチャリティーコンサートにも積極的に取り組んでいます。2004年11月には、中越地震で被災した子供たちのために慰問コンサートを開きました。マスコミには一切公表されることなく行われたこのコンサートで、子供たちは梯さんのピアノにじっと耳を傾け、疲れた心を和ませました。子供たちは喜びと感謝の手紙を梯さんに送っています

全国から寄せられる素直で繊細な子供たちの言葉に、梯さんは大きく心を動かされました。子供たちの感動にこたえたい。子供たちのために何か出来ることはないだろうか? さまざまに思いを巡らした末に行き着いたのはやはり「音楽」でした。小さなころから自分を育て、生きる力を与えてくれた「音楽」。だからこそ、子供たちの感動に音楽でこたえたい、音楽の本当のすばらしさを子供たちに伝えたい。なぜなら、音楽 −音楽家の心、秘めた想い、人生の喜び哀しみ、自然の厳しさ美しさ、神の叡知、生命の神秘、ありとあらゆるものが凝縮されたもの− を通して人は感動を分かち合うことができるから。だから、子供たちにもっと音楽に近づいて、身近に感じ、好きになってもらいたい。そうして子供たち一人一人が新しい世界を築き、一人一人の想いを大切にし、自己の可能性を発見してほしい。夢をもってほしい、勇気をもってほしい・・・・・

梯さんのそんな熱い想いから「子供に伝えるクラシック DVDプロジェクト」が生まれました。



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